片岡英彦のNGOな人々 (Non-Gaman Optimists)フローズンヨーグルトブーム到来?
株式会社ノット 谷川佳社長

(2012.09.11)

「NGOな人々」”Non-GAMAN-Optimist”とは、「ガマン」をしていられず、チャレンジをし続け決して諦めない「楽観人」のこと。NGOな人々へのインタビュー第21回目は、 “量り売り”という、ある意味懐かしいスタイルのフローズンヨーグルト専門店『パーティーランド 渋谷スペイン坂店』を今年7月にオープンさせた、株式会社ノットの谷川佳社長です。同店は同ブランドのFC(フランチャイズ)店舗第一号店。沖縄と大阪以外では初の出店とのこと。今回は特別にモデルの永棟安美ちゃんに撮影のお手伝いしてもらいました。(おじさんが揃ってフローズンヨーグルトの試食するのは「絵的」にイタいので。。。)

■谷川佳 プロフィール

(たにかわ・けい) 株式会社ノット代表取締役。明海大学 経済学部卒業後、バンタンデザイン研究所に入社。主に営業企画などに携わる。平成11年9月ノット(個人事業)として開業。平成16年3月株式会社ノットへ組織変更し代表取締役に就任、現在に至る。主に企業のセールプロモーションやブランディング活動をイベントやメディアを通じて支援。2010年『Adobe FLASH PLATFORM CAMP Tokyo』の展開や、ロサンゼルスで行われたAdobe最大の祭典『Adobe MAX 2010』のフォローアップイベントの実施の他、ユニークな企画やバラエティーに富んだアイデアで数多くの話題を生み出す。鎌倉由比ヶ浜海岸にある自社が運営する「海の家」では毎年夏に「JINROマッコリ女子会イベント」など様々なタイアップ企画を実施。2012年7月渋谷スペイン坂に『パーティーランド 渋谷スペイン坂店』をオープン。連日、若い女性客やメディアの取材などで賑わっている。

photo / 渡辺遼
トッピングはフレッシュフルーツ。

片岡:こちらへお伺いする前に、WEBで一通りどのようなメニューがあるのか、拝見していたのですが……まず、素朴な疑問がひとつ。この「フローズンヨーグルト」という商品に着目したのは、何か理由があるのでしょうか?なぜ「アイスクリーム」ではなく「フローズンヨーグルト」だったのか、その辺り何かこだわりがあれば教えて頂きたいのですが。

谷川:まず一番のポイントは「低カロリーでヘルシー」だということ。フローズンヨーグルトはアイスクリームと違って「脂肪分が入っていなくてもクリーミーな味」が出せるんです。それは大きなポイントになるなと思いました。“スイーツは食べたいけれど、カロリーが気になる!”という女の子の願望を叶えてあげられるのではないかと(笑)。もうひとつ言うと、用いられる素材はすべて「made in Japan」のものを選んで提供しています。そのあたりの品質には強いこだわりがあります。

片岡:なるほど。本業のマーケティング視点から商売に落とし込んでいくのは非常に興味深いです。ちなみに、フレーバーやトッピングは、どんな組み合わせのものを作る人が多いのですか?

谷川:そうですね……たとえばフレーバーでいうと、東京では「チーズケーキ」と「プレーン」がよく出ます。意外に思われるかもしれませんが、実は東京では「バニラ」はあまり出ないんですよ。

片岡:へぇ、おもしろい。

谷川:トッピングの方は、フルーツが圧倒的に出ますね。……うちは冷凍物を使ってないんですよ。フレッシュフルーツにこだわっていますので。自分で言うのも変ですが、実際食べてみて、味もイケるなあと……(笑)

片岡:あはは(笑)でも、フレッシュフルーツで日本産だと原価もかなりかかりますよね。

谷川:そうなんです。それは結局、お客さんが一番分かって下さるところだと思っています。“食べてみて美味しくなかったら、次はないよね“という話です。たとえば家族や友達とどこかに出かけて、ちょっと美味しいスイーツでも食べようと思ったら、それこそ有名なお店に行ったり買ったりするわけですよね。スイーツ1個に1000円というのは大袈裟かもしれないですけど、フレッシュフルーツが入ったそこそこ高級感のある商品ですと、普通は800円とか平気でするんですが、それをデパ地下などで買って、家に持って帰って食べるじゃないですか。

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片岡:確かに。“高いな”と思いながら、デパ地下だとフレッシュフルーツのケーキやアイスクリームなどをまとめて買うことがありますね。

谷川:ですよね。僕がなぜこの店がイケる!と思ったかというと……日本国内のフローズンヨーグルトの消費量がまだまだ少なく、伸びしろがあると感じたんです。「日本国内のアイスクリームの消費量」というのは、すでにだいたい決まっていて、僕はフローズンヨーグルトもアイスクリームカテゴリの一種だとは思っているのですが、日本国内のアイスクリームの消費量のうち、フローズンヨーグルトの占める割合は非常に低いんです。数字には出てこないぐらいしか消費されていない。でもアメリカや、韓国や東南アジア系の国、特にタイとかシンガポール、香港などでは、フローズンヨーグルトは、外食としてのアイスクリームの中で占める割合が半分近くにもなる。
 

『パーティーランド 渋谷スペイン坂店』のフローズンヨーグルト。客単価は420、30円。
フローズンヨーグルトのカロリーは普通のアイスクリームの1/3。

片岡:なぜ海外ではフローズンヨーグルトは売れているのですか?

谷川:それは冒頭でも申し上げたことに関係するのですが、特に欧米諸国の「健康志向」によるものですね。

片岡:実際、フローズンヨーグルトはアイスクリームよりもカロリーはずいぶんと少ないんですか?

谷川:はい。カロリーは普通のアイスクリームの1/3ぐらい。脂肪分という意味では基本的には“ノーファット”なんですよ。100g中に占める脂肪分は、「プレミアムアイス」と言われるアイスだと14~16gくらいまであるんですね。それが、フローズンヨーグルトだとゼロなんです。

片岡:いわゆる“乳脂肪分”というものですよね。

谷川:ですね。乳脂肪分がゼロなので食べてもあまり太らないということ。あと、乳酸菌が入っていて……実は今、ヨーグルト自体がすごく流行っているんですよ。各社が色んな「菌」が入っていてどうのこうのと押し出した商品を企画し、販売しています。乳酸菌自体がすごく健康に良いということで、その存在が見直されて来ているんです。日本ってどっかで火が点くと……「え?アイスクリームじゃなくてフローズンヨーグルトなの??」って一気にこれまでの既存の空気が新しい空気に変わるじゃないですか(笑)そういう空気を作ってみたいと思います。

フローズンヨーグルトがアイスクリームのシェアを喰っていく その空気を作れたらおもしろいんじゃないかと。どこかのタイミングでボンっとシフトしないかなぁ……なんて思っています。もう、すでに少しブームが来始めてるんです(笑)ある日、「ボン!」とブームが来る時が3年以内くらいにあると思います。現に海外がそうですから。

フローズンヨーグルトブームを想定。

片岡:それは楽しみですね(笑)例えば、空気やストーリーを産み出していく、といった点で具体的にはどのようなお考えがあるのでしょう? お伺い出来る範囲で構わないのですが。

谷川:そうですね。解りやすいところでお話すると、まず店舗を増やすことです。「フローズンヨーグルト」がいつか「ボン!」と来たときに、お客さんに来てもらう場所に限りがあると、それ以上に空気は拡げられません。ブームというのは誰もが接するコンタクトポイントがあって、モノが流通しないとダメですから。もうホントにこれはブームになるべくしてなった、というくらいの「面作り」が必要かも知れません。

片岡:確かに。フローズンヨーグルトって、ブームにならない理由があまり無いですもんね。健康的で、目新しくて、老若男女が手に取れる食材で、海外ではすでに主流になっていますし。

谷川:そうなんです。「これが海外のスタンダードだよ」という話になると、日本はすぐに「ボン!」と来ますからね……。せっかくのチャンスを吸収するためには、店舗の拡充はさけられません。他のフローズンヨーグルトの店でも良いのですけれど……とにかくフローズンヨーグルトの店が沢山出来て、全国に何十店舗か出来た時にそういうブームになってメディアにもっと紹介された時のことをすごくイメージしていますね。それが3年以内になると思っています。やっぱり夏に向けてだと思うので……来年の夏なのか再来年の夏なのか……。

片岡:その予言すごく当たりそうな感じがします(笑)ところでFC第一号店を東京にした理由はあるのでしょうか?

谷川:本業では、基本は全て企業が相手の仕事(B to B)です。直接、消費者を相手にした仕事(B to C)を、1つはやってみたいなと思ったのがきっかけです。その中で、比較的私たちが参入しやすい分野というところで、“飲食”というのを考えたんですけれど、“飲食”ですとやっぱり“店長”とか“シェフ”とか、人に依存しちゃうところが多く、長い目での「ビジネス」という視点で考えると難しいので、それを考えた時にFC(フランチャイズ)という手があるなと思いました。

その時に、たまたま知り合いがパーティーランドをFCでやるよという事で3年前ぐらいから話をもらっていて、「東京で出来るようになったらやりたいなあー」なんて話をしていたんです。どうせやるならば、うちは本業がプロモーションなので、FCの立ち上げから携わるっていうのも面白いなと。それで、FCの一号店をうちにやらせて頂くことになりました。

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片岡:ここはFC一号店なんですか?

谷川:一号店をやらせてくれって言って、その時に言ったのが、沖縄でも大阪でもなく、東京でやりたいと。東京のどこでどんな店を作るかという事をしっかりマーケティングしてからやらないと、一気に店舗数を増やすことは出来ないよと言いました。僕はスペイン坂の店がすぐに上手くいくとはあまり思ってなくて……ここはフラッグシップ店舗だと思っています。渋谷のスペイン坂が起点になり、ここから全国に広げていけばいい。うちは渋谷だけでやるつもりでは無くて、全国区の一店舗目として、まず「やろうか」という思いでした。
 

今回は特別にモデルの永棟安美ちゃんに撮影をお手伝いしてもらいました。
次の目標は、話題になって、SCや、駅ビルなどから誘われるようになること。

片岡:オープンして手応えはどうですか?

谷川:まずプロモーションとして仕掛けた事が色々とあった中では、例えばWebとかWebのニュース系で最初に火がつき、後にブログ系ですとか……その辺のスタートダッシュの部分はとても上手くいっています。あとはTVも、今はキー局も『やじうまテレビ!』(テレビ朝日)や『めざましテレビ』(フジテレビ)、『王様のブランチ』(TBS)などでも取り上げられ、お陰さまで全国的な話題になりつつあります。店の前を通っていると「ああ、あの店だ!」とか言う子もけっこう多く、プロモーションとしては、それなりに上手くいっているかなと。

事業として上手くいくかどうかは、この1店舗での売上げがどうのこうのというよりも、まず話題になって、ショッピングセンターや、駅ビルなどから「来て欲しい」と思われるようになるのが、次の目標です。

片岡:客層は10代20代の女の子ですよね。

谷川:10代20代の女の子……と思ってはいるのですが、それはあくまでスペイン坂店の話です。今後、ショッピングセンターなどに入っていくことを考えると、ファミリー層などもターゲットになります。子供が「アレをやりに行きたい」っと……要するに「食べに行きたい」ではなくて「アレやりに行きたい」と、色んな味や、無限に組み合わせられるトッピングの組み合わせを楽しんでもらいたいです。店の中で何種もの味が並んでいて、その中から何種類かを選ぶのですが、さらにトッピングで自分の好きな物を作れます。そういった自分で作るという“楽しみ”があるという意味でいうと、今後はファミリーがターゲットになってくるかなあと思うんですよね。


店に入るとすぐにモニターで作り方を説明してくれる。


左・まずはカップを選ぶ。どのカップもカラフル。
右・カップの大きさはLとMの2種類。

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片岡:アイスを量り売りするというのは、他には全く無いんですか?

谷川:いや実際、他にもやられている店はあります。違いとしてはまず味が全然違います。これは食べてもらうと分かります。うちはフローズンヨーグルトにこだわってやっています。あとは値段が違います。うちが今200円/100gでやっています。仮に100gが350円だと、そこに家族4人で行くと1人千円近くなります。4、5人だと5千円ぐらいになってしまいます。一生に一度の観光地など特別な機会ならばともかく、普段スイーツに家族で5千円も払いますか?ちょっと有り得ないじゃないですか。今スペイン坂店でいうと、実際の客単価が420、30円くらいです。まあそんなもんじゃないかと思います。

片岡:思っていたよりも、お手頃価格ですね。東京の渋谷スペイン坂店はまだ開業して間もないですから。初めてくるお客さんがほとんどですよね?まあもちろん、リピーターも中にはいらっしゃるでしょうけれど、最初はセルフサービスでの「量り売り」というスタイルに慣れていないと思いますが……リアクションはどうですか?

谷川:安かったって言ってくださった方が割と多いですね。「あ、こんなもんなんだ。」といった感じです。女子高生などは、「ああ、ヤバい!……380円も行っちゃった!って、言う方もいますけど(笑)

片岡:フローズンヨーグルトって、「仕込み」というか販売前の準備や、後の洗浄などは、けっこう大変ですよね?

谷川:中身を全部分解して、毎日機械を洗浄するんです。分解洗浄みたいなのを毎日やるのでそこが大変です。

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片岡:今スタッフが常時3人ぐらい?

女性:大体3人です。

片岡:オープンからクローズまで3人で回している!?

谷川:そうです。実際は他の店舗は……一番長い沖縄店で3年経つんですけれど、そこはリピーターが中心になってくるので、そうなると勝手にもうお客さんが自分で何でもやってくれるんです(笑) ……そうすると実際に店舗は2人で回っちゃいます。実は、僕らは「飲食業」とは思ってなくて「物販」だと思っています。いわゆるそのお店の売り上げに対して、通常でいうと人件費というのが飲食で言うと30%という大体のラインがあるのですが、今のこのビジネスモデルですと、売り上げが良くなってくると、人件費率が10%とかを切る場合もあります。


トッピングを自由に選ぶ。トッピングにはフレッシュフルーツがいっぱい。オレオやグミもある。


左・お好みのフレバーを好きな種類、好きなだけチョイスできる。.
右・お好みのフローズンヨーグルトが完成!

「セルフサービス」×「フローズンヨーグルト」というビジネス。

片岡:「アイスクリーム」×「量り売り」というビジネスモデルではなく、本質は「セルフサービス」×「フローズンヨーグルト」というビジネスなんですね。実際は。

谷川:日本企業が弱まって来ているという現実があります。その環境の中で商売をやって行くうえで、お陰さまで、うちは本業の業績自体は全体的に伸びています。ただ、伸びている今だからこそ、何か新しい事をやらなくてはいけません。何をやろうかと考えた時に、こういう日々消費者からお金を頂く商売というのは、ある一線を超えれば安定していくのかなという期待が強くあります。まあ、安定志向的なことで言えば。それが1つ。

あとは今までこうやってきて、プロモーションという仕事を、実際に自分たちの店でやってみたらどういう形で使えるんだろうと試してみたかったんです。実際これをやってみたらノットの良い所も、悪い所もすごく見えてきました。要するに強い所と弱い所が見えてきたんです。それがすごく勉強になりました。

片岡:強みと弱みとは?

強い所と言えば、今回の事で言えば、プロモーションのネタ作りとか、そういった話題のネタを色々作って手掛けて……というのはとても良く出来たなあと思います。あえて顧客の立場で今回「ノットさん」に仕事を頼んだとすると……やっぱり、まだまだ弱いなという所は、Web周りのプロモーション、特にウェブPRに関しては、まだまだ弱いなあと感じています。

反対に、ノットの代表としては、もっとこっちに力を入れていこうと。今回Facebook、Twitter、mixi等を中心に、刈り取りが出来る媒体を、特にお金をかけずにやっています。Facebookだと500人くらいでしょうか。でも1企業からすると「500人なんて」という話じゃないですか。どこも何千人何万人という規模でページの運営をしているので。実際には他の、会社で受けている案件とかは今まで1000人だったのを今8000人くらいにまで増やしていく案件とかがあって……そういう規模感でのこともやっているのですが、僕らとしては、今回、出来るだけ原価を抑えてどれだけできるかという、それが今後の活動にもつながっていくのだと思います。これからもっと強くしていかなきゃなあという点はこうしたところです。

初めてお客側になって「ノットさん」という会社に仕事を頼んだとすると、リアルプロモーションは安心して頼めるし、他の会社には頼めないな、くらいになりたいと思うのですけれど……「イベント」はすごいと思うけれども、プロモーション全体として考えるともっともっと、デジタルの世界を強化して、そこをリアルにどうやって繋げていくのかっていうのを考えていかなくちゃいけない。今度実際それがどうやって売り上げに繋がるかというのを作っていかなくちゃならないと思います。

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片岡:この『パーティーランド 渋谷スペイン坂店』はノットという会社にとっての広報的な意味合いもあるという事ですね。

谷川:はい。それはすごくあります。今回、スペイン坂に店を出しましたが、うちはバンバンTV等に露出することができて、「どういう事ですか?なんでそんなに沢山TVに出るんですか?」みたいなことを周囲から言われました(笑)お陰で、今、PRをお願いしようかなという話がきている所なんですよ。そういう意味でいうと、変な話ですが、社員の裏話でいうと……社長勝手に「アイスクリーム屋」やりやがって、みたいなのがあるんですよ(笑)……社員からすれば「俺たちが稼いだお金で」みたいな。そういう社員の思いもすごくあったとは思うんです。「何でアイス屋なんだよ?」みたいな。でも、実際、プロモーションとしてはすごい成功事例となったので、社員からしてもまあまあ何となくは納得してくれているのかなあ。あとはもう、実際売り上げでどうなるかという話だと思います。

片岡:「あのアイスクリーム屋さんを経営しているノットさん」にプロモーションをお願いしよう!というそういう流れですね。僕も直観的に、この店は口コミで行けるなあと思いました。ポイントは自分で好きな組み合わせが作れて、店の中で写真を撮ってネットに載っけやすいじゃないですか。「ほら、こんなの作った」で「いいね!いいね!」って盛り上がりやすい。さっきもお客さんの女の子が自分でデコレートしたフローズンヨーグルトの写真を撮っていたじゃないですか。きっとあの場でTwitterなりFacebookなりmixiなりに載っけているワケですから、それをみんな見て、流行になっていきハマるんです。

谷川:正に。僕も「これ絶対当たるな」と思ったんですよ。それは、何でかといったら、要するに口コミをお客さんが勝手にやってくれるじゃないですか。作って、撮って……。3回目来店する理由っていうのは、美味しいかどうかなんですよ。1回目来て面白かったら2回目までは来てくれるんですよ。1回目2回目までは店に来て口コミしてくれれば、もうそれで十分です。そこから先は要するに味の勝負で、それはやっぱり自信を持って美味しいと思える物を提供するかどうかが、長い商売になるかどうかの話です。

原点は「モヒート」のプロモーション。

片岡:先物買いといいますか、需要創出型といいますか、こういったビジネスを行う原点は何ですか?

谷川:僕、ちょうどノットの仕事で“バカルディ”のモヒートのプロモーションに関わったことがあります。当時バカルディの宣伝担当の方と実施した時の経験からです。その頃、モヒートって、まだあまり知られていなかったんです。そのモヒートを担当の方が……「やっぱりバカルディが良いんだよ、モヒートには」と。なんでかといったら、海外で飲んでいるバカルディのモヒートを使うことの方が、カッコいいというイメージがあり、ドラマなどにも普通にバカルディがレシピとして使われています。「モヒートにバカルディ」ってどう?といってその方がプロモーションを始めました。それが5年ぐらい前のことです。バーの店員さんたちを相手に「美味しいモヒートの作り方」みたいなプロモーションを行っていきました。

モヒートというのはミントを使うのですが、ミントは「ナマ物」じゃないですか。お酒を出す店はナマ物を使うのは嫌なんですよ。痛み易いから。それをどうやったら長持ちするかなどを考えて、そのためのケースを作って店に入れたり、そういう風に徐々に徐々に販促活動を広げていきました。そういうのを見ていて、モヒートは元々夏の季節物ですから、いつか「夏」にブレイクするなと。でも10年先じゃないな、というのが見えたんです。これはもう絶対イケると思ったんです。

片岡:考えてみたら、別にモヒートにバカルディを使わなくてもレシピ上は構わないですもんね。ホワイトラムなら何でもいいはずです。でもモヒートが流行って、モヒートの需要が増えれば必然的にバカルディも……。

谷川:それまで、日本ではモヒートって他のホワイトラムで作るバーテンダーも多かったんです。それを「モヒートにはバカルディ」なんだよという需要を作り出す所から初めて、今では「バカルディ、どう?」とよくバーなどで言われるようになったじゃないですか。あの成功を見ていたのもありました。これはイケるだろうなと……日本人のミーハーな気質とか、そこはうまくプロモーションしていけるのではないかと。

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片岡:ありがとうございました。ところで、さっき永棟安美ちゃんがトッピングでグミを入れていた時に「え?」と言ったのは、なんでですか?普通にトッピングメニューとしてあるのに。

谷川:東京の方はよくグミを入れるんです(笑)僕はグミを入れるのは食べていて邪魔でしょうがないんで、入れないんです(笑)

片岡:あれだけ歯ごたえがあると確かに、若干食べにくいですよね。大阪ではグミはあまり出ないんですか?

谷川:大阪ではあまり出ないですね。

片岡:直観的にグミは損するような感じがするんですかね。原価が安いとか?

谷川:原価は安いんじゃないですか?フルーツがやっぱり原価が高いんですよ。だからお客さんにフルーツだけ盛られて帰られちゃったら赤字になりますよ(笑)

片岡:そうですよね。フルーツだけおかわりされて帰られちゃったら……こんなこと書いてしまっていいんですかね(笑)ありがとうございました。

モデルの永棟安美ちゃんもニッコリ。
■インタビューを終えて

「アイスクリームの量り売りの店」という先入観を持って取材にあたったのですが、このお店のビジネスモデルの本質は「フローズンヨーグルトのセルフサービス」の店でした。こうした「見た目」と実際の「ビジネス」が異なることはよくあります。印象的だったのは「飲食」ではなく「物販」と考えているという点でした。

確かに、現在の飲食業においては「安くて美味しい」というのは当たり前の時代になり、どの店も人件費や、原価などの問題もあって大変苦しい戦いを強いられています。そこにあえて新規参入するからには、単に美味しいというだけではなく「楽しさ」というプラスαの「エモーショナル」な付加価値が必須なのでしょう。この「楽しい」という「エモーショナル」な付加価値はPRやプロモーションとして活かしやすいこともあり、既存メディアへの露出ばかりでなく、C to Cのいわゆる「クチコミ」で拡がっていくためのポイントでもあります。

実際、私も試食させていただきましたが、フローズンヨーグルトの「サッパリ感」が「フルーツ」とよく合い、若い女性はもちろんですが、カロリーを気にする男性や、ファミリーなどにも、今後、拡がっていく潜在力があるのではないかと思いました。