いよいよ、オープン! 
東京スカイツリー、建築の秘密

(2012.05.15)

「東京スカイツリー」が、5月22日にいよいよグランドオープンを迎える。スカイツリーはそもそもどんな建築で、どこがすごいのだろう? 見学前にそのイロハをしっかりと押さえて、プチうんちくを披露してみては?

高さは東京タワー+ 301m。自立式タワーでは世界1

完成前から、テレビをはじめ、さまざまなメディアへ話題を提供してきた「東京スカイツリー」。注目を集めるいちばんの理由はなんと言っても634mというその高さだろう。自立式のタワーとしては、2009年完成の中国の広州タワーを抜いて世界第1位の高さとなった。建築物としては、2010 年に完成したドバイの「ブルジュ・ハリファ」という超高層ビルが828mあるため、スカイツリーはそれに続く世界第2位である。634mという高さはちなみに、「634=むさし」が日本人になじみが深く覚えやすい響きをもつとともに、タワーから広く望める、かつての「武蔵(むさし)の国」をも連想させることなどから決められたものだという。

1958年に完成してから半世紀以上もの間、日本1を誇ってきた東京タワーの高さが333m。スカイツリーには2つ展望台があるが、低い方の「展望デッキ」が地上から350mの位置にあるので、ここですでに東京タワーの高さを超えていることになる。この2つの電波塔を除いて日本でいちばん高い建築は「横浜ランドマークタワー」で296mだ。東京都で一番高いのは2007年完成の東京ミッドタウン内「ミッドタウン・タワー」で248mだから、いずれも300mにもおよばない。こうして比べてみると、スカイツリーの高さがどれだけ抜きんでたものかが分かるだろう。

三角から円へ――変化する形

スカイツリーが立つのは墨田区押上1 丁目。浅草寺から約1.5km離れたこの敷地は、以前は貨物列車ヤードとして使われていた場所だ。スカイツリーのように細長いタワーを建設する場合、足元を広げたほうが構造的に安定するが、敷地は東西方向に細長い形をしているため南北方向の幅に余裕がない。そこで、この敷地条件のもと、1辺がいちばん長く取れて足元をもっとも広げられる正三角形が最下部の平面として採用された。これは、見た目の圧迫感を減らすなど、周辺への配慮を検討した結果でもあった。一方、展望ロビーは風景を360°同じように見渡せるように円形が採用されたことから、足元から上部へ向かって、三角形から円形へと変形するという、世界的にも例を見ない形状のタワーとなった。

そのためスカイツリーは、三角形の辺の部分が上へ行くにつれ外へ向かって膨らんで約300 mの高さで円形となっている。側面から見ると、三角形の3つの辺のそれぞれまんなかあたりから伸びるラインは外側へとゆるやかなカーブを描き、逆に、足元の三角形の頂点から上へと伸びるラインがタワーの内側へ向かってゆるやかなカーブを描いているのだ。見る位置によってシルエットが違って見えたりするのはこのためだ。

スカイツリーは、上にいくにつれて平面(建物を水平に切って上から見たときの形)が三角形から円へと変化する。いちばん上の円の位置が地上から415m。以下順に、300m、210m、125mの高さでの平面の形を示している。2つある展望台は、上が450m、下が350mの高さにある(図版提供=日建設計)
タワーの主要部は4重構造

外観からは分かりにくいが、スカイツリーは4 重の構造からできあがっている。まず、タワーの中心部分にあるのが鉄筋コンクリートでできた直径8mの円筒(心柱)で、この中には避難用の非常階段がおさめられている。その外側には、これを取り囲むように内から順に「内塔」「中塔」と呼ばれる鉄骨の骨組みがあり、内塔の外側にはエレベータースペースが設けられている。そしてさらにその外側のタワーの外周部分には、鋼管を使ったトラス構造(三角形を基本単位とする骨組み)の「外塔」が配置されている。外塔と中塔は、水平連結階とよばれる箇所で水平につなげられている。

中央にある円筒以外では円形および四角い形の鋼管が使われている。鉄の骨組みが採用されたのは、鉄筋コンクリートでつくった場合よりも開放的な印象になり、スカイツリーのように細長い建築では、軽いほうが地震が起こったときに有利なことから。また、風を受ける面積が少なくてすみ、強い風が吹いたときの影響を軽減できるというメリットもある。


ある高さの「水平連結階」の構造を分かりやすく示した図(提供=日建設計)。スカイツリーを水平に切って上から見ている。トラスというのは三角形を基本単位としてつくられる構造骨組みのことで、図中のトラスはそれぞれ次のような役割を担っている。
鼎(かなえ)トラス:三角形平面の各頂点の位置にあり、水平方向にかかる力に抵抗する主な構造
水平連結トラス:中塔- リングトラスを2層ごとに連結する骨組み
リングトラス:1層ごとに配置される水平材
世界初の制振システムを採用

地震の多い日本で、巨大なタワーをどのように地震から守るのか気になるところだ。スカイツリーでは、非常階段がおさまる中央の円筒が「おもり」の役目をして、その円筒の揺れと外側の鉄骨造部分の揺れのタイミングがずれることによって地震の力を相殺するような構造になっている。外側の鉄骨部分が右側に揺れる時に円筒が左のほうへ揺れることによって全体の揺れを小さくするというような仕組みだ。

このスカイツリーのシステムは、鉄筋コンクリートの重量をおもりとして利用した世界で初めての制振(制震)システムで、「心柱制振」と名付けられている。地震によって倒壊した例がほとんどない五重塔の心柱(しんばしら)に由来した名称で、このシステムによって、地震による揺れを最大で50%ほど減らすことができるという。

制振システムの概要を表した図(提供=日建設計)
ライティングのコンセプトは「粋」と「雅」

夜空にスカイツリーを映し出すのは、「粋(いき)」と「雅(みやび)」という2種類の照明だ。スカイツリーの立つ墨田区は東京でも特に江戸情緒の残る地区。ここから連想されるちゃきちゃきの江戸っ子の心意気を表現した淡いブルーの「粋」と、現在の東京にもつながる、スタイリッシュな、洗練された美しさを表現した紫色の「雅」とが1日交替でスカイツリーをライトアップする。

「粋」の、心柱をブルーに照らすライトアップは、裸で半被(はっぴ)を着る男性のように、タワーの内側までが透けて見える。対照的に「雅」のほうはほぼ真北を向いた三角形の角の部分だけを江戸紫と呼ばれる紫色で外からライトアップし、スカイツリーが衣をまとっているようなやさしい雰囲気を狙った。「粋」がまっすぐ立っているのに対し、「雅」はゆらりとした動きをもってしなやかに立つイメージで、色だけでなくライトアップの方法でも対比的に見えるように工夫されている。

「粋」「雅」ともに、タワーの全体を外側から強い光で照らし出すという手法は取られていない。これはエネルギーの消費を抑えるとともに、闇夜に月が浮かぶような情緒ある風情によって、「陰翳礼讃」の思想にも通じる日本独自の美意識を表現するためでもあった。

スカイツリーが一気に進めたLED技術

スカイツリーを照らすのは約2000 個にもおよぶLED だが、当初は放電灯を使った設計が行われた。しかし放電灯は、メンテナンスや器具の大きさ、また発色の問題などがあったことから、未来の光源として注目され始めていたLED での設計が検討されることになる。とはいっても、LED は当時はまだ開発途上で、色は汚く、明るさも住宅の廊下にやっと使える程度しかなく、5m先までしか照らせないと言われる状態だった。

そこで、LED を使った世界初のビックプロジェクト実現のために、各メーカーが競い合って開発を進めることとなった。その結果、短期間でスパイラル状に性能が上がり、放電灯にかわって使用されることになる。スカイツリーが日本のLED 技術を引っ張った、と言っても過言ではないだろう。

「粋」と「雅」だけでなく、「時を刻む光」と呼ばれるライティングもLED によって可能になった。この光は、2つの展望台の上部に点灯して展望台を約2 秒で1周するが、タワー上部で美しく点灯するこの光もLED だからこそ可能になったものなのだ。昼夜に関係なく点灯するこの光は、江戸時代の人から将来の東京で暮らす人までバトンのように受け渡されていく歴史性と同時に、永遠の時の流れが表現されたものだという。

「粋」のライティング(CG 画像、提供=日建設計)

 

「雅」のライティング(CG 画像、提供=日建設計)

取材協力=東武タワースカイツリー株式会社、日建設計、シリウスライティングオフィス