Creators 『サラリーマンNEO』のユーモア、
アイディアの活用術とは?

(2012.04.13)

’06年NHKでスタートしたコメディシリーズ『サラリーマンNEO』。
番組ディレクター 吉田照幸さんはこの春から『丸の内朝大学』にて、
仕事や生活にとりいれたいユーモア術の講義「ユーモアマンNEOクラス」を受け持ちます。
普通のサラリーマンの生活を時にシュールに、時にあるある!共感を持って描いた
『サラリーマンNEO』の作り手が考えるユーモアとは? 

■吉田照幸 プロフィール

(よしだ・てるゆき)NHK制作局 第2制作センター エンターテインメント番組部ディレクター 
NHKでは異例のコント番組『サラリーマンNEO』の全シリーズを演出。『サラリーマンNEO』は’06年よりシリーズ化、「サラリーマン体操」「セクスィー部長」などよく見るとおかしいサラリーマンの生態を描いたスケッチ、シュールな設定のコントで人気となり’11年 シーズン6まで放映。’07、08年には国際エミー賞コメディ部門にノミネートされた。’11年、シリーズに登場した主要キャラクターが総出演する映画『サラリーマンNEO 劇場版(笑)』を監督。この4月より丸の内朝大学にて「ユーモアマンNEOクラス」の講師を務める。

ユーモアを交えたものの考え方、
人に伝えるスキルを学ぶ。
ーNHKの人気番組『サラリーマンNEO』は昨年映画化されて4月27日にはDVD発売となります。また、16日からは丸の内朝大学「ユーモアマンNEO クラス」で、吉田さんは指導をされるということです。「ユーモアマンNEO クラス」は、ユーモアをビジネスに役立てよう、というクラスでしょうか。

吉田 日本の会社や社会にも、そろそろユーモアが必要になってきているのではないかと。現代は、ただ言われた仕事をやっていればよいという時代でななくなってきており、何か新しいことを見つけなければいけない。そういう時にただ生真面目に考えたり、伝えただけでは印象に残りにくい。ユーモアを交えたものの考え方、伝え方をすると、新しいものが生まれてくるんじゃないかなと考えています。

参加者には少なくとも2本はコントを書いていただきます。でも、実際に書いていただいたものは、おそらく面白いものではないんじゃないかと思います。そこで自分が普段、喋っている内容はこれくらいしか伝わらないんだ、と自分の表現力を客観視して、どうやったら面白くなるのかということを学んでいってほしい。会社でのプレゼンテーションのやり方も変わるんじゃないかなと思います。

ユーモアというと面白いことを言わないといけないと思いがちですが、そうではありません。喋っている時に、自分のものの見方だけで話しているといくら話しても面白くない。でも、客観的に人の話を聞いて、つっこみどころで笑わせることができます。コントを書くと、自分ではない人物のセリフを書くので、客観的になれるし、そこで他者への興味が湧きます。

実際、人を笑わせるようになるのは相当難しいと思うんですが、客観的に人、自分を理解して自分を変えるということをクラスで学べれば面白くなるんじゃないかと思います。

人はみんな驚くほど自分のことにしか興味がないものです。僕は特技として手相を観ることができるんですが、誰かの手相を観てあげていて、例えば「あなたは将来3回離婚する」などひどいことを言っても、言われた人は楽しそうなのです。人は自分のことにものすごく興味がある、心底思ってることを突かれると思わず笑ってしまう、ということがわかりました。これまで何百人の手相を見てきましたが、自分で手相を観ることができるようになりたい、という人はひとりもいませんでした。いかに自分にしか興味がないかということです。

人を観察し「あなたはこう見えるけど、本当はこんなところがあるでしょう」と真実を伝えた時に生まれる笑い、を僕は手相から学んだので、手相を観る方法も「ユーモアマンNEOクラス」に毎回5分くらいコミュニケーション術として入れようかと考えています。

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ー「ユーモアマンNEOクラス」ではユーモアを学べますが、お笑いとユーモアはどう違うのでしょうか? 『サラリーマンNEO』は体芸のように身体の動きやジェスチャーを使って笑わせるというよりも、言葉や、言い方、状況で笑わせるといった知的な笑いという印象です。

吉田 人が笑う時にはふたつあると思います。ひとつは予想外のことが起きた時。人がコケたり、思いもしないことを言われた時、思わず笑ってしまう。これはお笑い。即物的です。もうひとつは隠された真実を見つけた時に笑ってしまう。これがユーモアですね。海外では、ユーモアがあることはスマートである、とされます。ユーモアがある=頭がいい、となるのは、真実、本質的なことがわかっているかどうか、ということを別の形で表現しているからだと思います。

コントで考えると、この人は実際には何を求めているのかわかった瞬間が面白い。本当は人に認めてもらいたいのに、そうじゃないふりをしてかっこつけてる人って面白いですよね、見ていて腹が立つんですけど。客観的に見た時に笑っちゃう。そこを見つけてあげるだけでもユーモアになります。

それまでのNHKにはない&
NHKにしかできない番組『サラリーマンNEO』

ー『サラリーマンNEO』制作のきっかけはどのようなことだったのでしょうか? 吉田さんご自身がお笑いが大好きだったのでしょうか?

吉田 僕は特にお笑い好きというわけではありませんでしたが『オレたちひょうきん族』はじめ、その当時まだ若手だったウッチャンナンチャンや清水ミチコさんといった芸人がユニット形式でコントをやる『夢で逢えたら』、ロンドンブーツの『ロンドンハーツ』などは観てました。革命的なもの、それまでにないものを作っているところが好きで面白いと思ってました。『サラリーマンNEO』もそれまでNHKにないものを、というところに興味を持ってやっていたという気がします。

お笑いが好きな人というのは、「あのフリは昔あった」というようにお笑いの構造に着目したりしますが、そういうことよりも僕は人間のおかしいところに興味があります。例えば、恋をしていて告白したいんだけどできない人。これ見ていて面白いですよね。そっちの方に興味があります。

2012/4/27(金)発売『サラリーマンNEO 劇場版(笑)』より。新入社員の新城(小池徹平)の同期社員は60歳にしか見えない早川くん、先輩はたよりない川上くん、スケバン欧愛留……と『サラリーマ ンNEO』の人気キャラクターが総出演。

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『サラリーマンNEO』は、みんなが何を求めているのか客観視して作った企画でした。番組開発部に異動してから自分が面白いと思ったことを企画として出していましたが、なかなか通らなかったり、通って作ってみても面白くない。そこで自分ではなく、人が求めているものを作ってやろうと思い、友達などに訊いたところ、NHKには笑いがないから笑いがほしい、民放のテレビ局が深夜枠にやっているようなシュールなお笑い番組が見たい、という。

そこで、それまでのNHKにはない、なおかつ、NHKにしかできない番組を作ろうと、一見矛盾しているふたつの要素を両立させようと考えました。

コメディ番組というのはそれまでNHKにはなかった。ほかの放送局のお笑い番組は芸人さんを使っていたので、こっちは役者さんで行こう。ほかでは制服もののコントが多かったから、こっちはそうではないもので行きたい。僕達の上司は、植木等さんの映画や『駅前◯◯』といったサラリーマンが主役のお笑いを見て育った世代だったので、サラリーマンで行ってみようと考えました。コメディ、役者さん、サラリーマンの3本立てて考えたのが『サラリーマンNEO』でした。

ー『サラリーマンNEO』を作るにあたって参考にした番組や目指した笑いなどはありましたか? 

吉田 アメリカのコメディ番組を目指していました。日本の番組では、何発も殴られたりする身体を使ったものや、大喜利のようなものが多いと思いますが、もう少し人間関係の中で笑わすもの。人と意識が合わないとか、共通点が見いだせない、というような関係性のお笑いがやりたかった。

アメリカのコメディはほとんど人間関係で笑わせます。ドラマでも、たとえば『グレイズ・アナトミー』は、登場人物のキャラクターがめちゃくちゃ面白いとか、変わった格好をしているワケでもない。ただ、青春、恋愛関係を描いていて、それが面白い。

アイディアを頭の中に置いて
持ち運ぶ。

ーコント番組を作るにあたり、吉田さんは常々面白いことを探していると思いますが、心がけていることがあったら教えてください。

吉田 アイディアを考える時に、その場で考えてもなかなか出てこないものです。アインシュタインの言葉に「なぜシャワールームで思いつくのか」というのがあります、机に向かっていくら考えても出てこないのに、シャワーを浴びてたりする時にものすごいアイディアが湧いてしまうのはなぜなんだ、と嘆いた言葉です。

考えてみて出てこなくても、あきらめないで頭のどこかに置いておく。そうして普通に生活していると「あっ! これは!」と思う瞬間に、そこから出して来ることができます。

『サラリーマンNEO』のコーナーに「世界の社食から」という、世界の企業の社員食堂を紹介するものがあります。いろいろな会社の社食は、そこで働く人々の素顔が見られて面白いので、VTR取材でやりたいと提案しました。ですが「企業名が出ると企業の宣伝になってしまう」と却下されてしまった。

そんな時、みんなそこであきらめて投げてしまいがちですが、僕は頭の片隅に置いておきました。しばらくして、仕事から家に帰ってテレビをつけた時に、あのテーマ曲が流れてきて『世界の車窓から』が始まりました、その瞬間に「これだ!」と思いました。パロディにすれば宣伝には見えにくいから社食のコーナーができる。

アイディアは何かと何かをつなぎ合わせることで生まれるので、面白いなと思うことは、頭の中に置いておくことです、今風にいうと、iCloudのようなクラウドサービスみたいに、頭のこの辺(上の方を指して)にアイディアを入れておいて持ち運んでいるとアイディア同士をつなげやすいですね。

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ー『サラリーマンNEO』の沢村一樹さんが演じる人気キャラクター、どんなに仕事ができる女性でも、むせ返るようなその色香でたちまち虜にしてしまう「セクスィー部長」もそのようにして生まれたのでしょうか?

吉田 『サラリーマンNEO』は、内村宏幸さんと、平松政俊さんのふたりの作家さんを中心に脚本をお願いしていて、その他は駆け出しのライターさん7人に本を書いてもらって、採用になればギャラを支払うというコンペ制度をとっています。

「セクスィー部長」は、シーズン2の時です。あまりに凝った台本を作りすぎて、出演者の生瀬勝久さんに面白さがわからないとダメ出しされ困ってました。制作会議の時に「もっと単純に笑えるものはないか?」と話していたところ内村さんが「さっき車の中で思いついたんだけど、セクスィー部長、っていうのはどう?」と言いました。色気で女を倒す、というそれだけの案でしたが、「セクスィー部長」って聞いただけで僕は笑ってしまった。そこで書いてもらったところ面白くなりました。

「セクスィー部長」が女性を虜にする時にかかる音楽はゲーリー・ムーアの『パリの散歩道』です。音楽をどうしよう?と悩んでいた頃、プロデューサーに誘われて仕事帰りに六本木に飲みに行きました。そのプロデューサーはギターが大好きだったので、六本木にある、バンドをバックにお客さんが自由にギターを演奏できるというライブ・バーに行きました。そこで、そのプロデューサーが演奏していた曲が『パリの散歩道』でした、彼がギターをチョーキングする時の陶酔しきった顔の表情を見た時に「これだ!」と思いました。『パリの散歩道』を女性が「セクスィー部長」にやられてしまう時の音楽にしました。

強制的に、自分を変える
期間を設ける。

ーアイディアを持ち運ぶ、ということの他に心がけていることはありますか? 

吉田 一定の期間を設けて、ふだん自分がやらないことをやるようにしています。

僕はパーティや交流会に出るのが大嫌いなのですが、自分が決めた一定期間内は、誘われたら出席するようにします。読書も、本当はミステリーを読むのが好きなのですが、1ヶ月、自己啓発系の本を読もうと決めたらそれを読むようにします。

パーティに出るのがイヤなのは、うわべだけの会話をすることにいたたまれないからです。なら、本音で話せばよい。啓発本を読むのがイヤなのは、自分を変えようとして読みたいのだけど、それはそれまでの自分を変えないといけなくなる。ふだん自分がやらないことをやって自分を変えたい、というのはその必要性を自分が感じているからです。その機会をなるべくつぶさないようにしています。

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ーコメディ番組、人を笑わせる番組の作り手である吉田さんが、今、注目している人、作品があったら教えてください。

吉田 やっぱり自分ができないことをできる芸人さんには笑ってしまいます。杉ちゃんを見た時には衝撃を受けました。今は、男としてワイルドに生きるのが難しい時代です、でも彼は、ものすごく小さなワイルドを探してきて「ワイルドだろう〜?」と言う。新しいなと思いました。全くジャンルは異なりますが、おすすめの番組は『モダン・ファミリー』です。衛生チャンネルのFOXで放映されてます。今年のエミー賞コメディ部門受賞作です。ぜひ見てみてください。

『サラリーマンNEO』はこの夏、スペシャル番組として放送を予定しています。ハチャメチャな展開になると思います、こちらも楽しみにしていてください。

Blue -Ray / DVD『サラリーマンNEO 劇場版(笑)』
2012年4月27日(金)発売 (レンタルは5月2日)
BD 5,985円、DVD 4,935円(税込み)

出演:小池徹平 生瀬勝久
田口浩正 中越典子 入江雅人 堀内敬子 マギー 山西惇 田中要次 八十田勇一 池田鉄洋 中山祐一朗、中村靖日 野間口徹 深水元基 原史奈 奥田恵梨華 金子さやか 中田有紀 コンドルズ・瀬戸カトリーヌ 冨士眞奈美
伊東四朗 / 大杉漣 篠田麻里子 郷ひろみ(特別出演) ・ 麻生祐未 宮崎美子・ 平泉成
沢村一樹
監督:吉田照幸
脚本:吉田照幸、羽原大介、内村宏幸、平松政俊
音楽:ゲイリー芦屋
主題歌:郷ひろみ『笑顔にカンパイ!』
発行:NHKエンタープライズ
販売元:ポニーキャニオン

映像特典:メイキング・オブ『劇場版サラリーマンNEO(笑)』・小池徹平、生瀬勝久、沢村 一樹、篠田麻里子インタビュー・舞台挨拶 し たまちコメディ映画祭、東京国際映画祭、映画公開初日・未公開おたのしみ映像・特報・予告・TVスポット・サラリーマン川柳コント
音声特典:本編コメンタリー

https://www.facebook.com/neomovie.fb

©2011「劇場版サラリーマンNEO」製作委員会

Blue -Ray / DVD『劇場版サラリーマンNEO(笑)』 2012年4月27日(金)発売 (レンタルは5月2日) 、BD 5,985円、DVD 4,935円(税込み)